つい最近の事ですが大御所ロン・トレンパー氏から1通のメールが届きました。内容はトレンパージャイアントの遺伝に関して最近の検証結果から優性遺伝である事が証明されたとの事です。以前より、本人からこの変異の遺伝形質は劣勢遺伝と説明されていた当社としても“何じゃそりゃ!”といった内容ではありますが、何回かのディスカッションを重ねた上での今現在の理解に基づいてご説明させていただきます。
この変異の歴史は1999年、彼の繁殖コロニーから突然生まれたノーマル表現型のしかしながらとても大きなベビーからはじまりました。この個体は♂でしたが生後10ヶ月で全長27.83cmにも達したそうです。 2000年、氏はこの大きな♂を何匹かのアルビノ♀と掛け合わせましたところ驚いたことにアルビノのべビーが生まれました。偶然にもこの大きな♂はアルビノのヘテロでもあった訳です。2001年には、2000年の繁殖によって生まれたアルビノの♀とヘテロアルビノの♀に父親である大きなヘテロアルビノを戻し交配した結果、アルビノで尚且つ大きいベビーを得ることが出来ました。このべビー達は胴長で大きな頭と長い尾をもって生まれ非常に早い速度で成長します。此の時に生まれたべビーの中の一匹が皆さんよくご存知のムースです。(体重 156g 全長 28.15cm 2004年11月現在)ムースを含めこのとき生まれたムースの兄弟達の内、大きい個体のみを選別したのが現在マーケットに出ている個体の父親ということになります。
これまでの5年間の繁殖シーズンを経て得られた結果から当初は劣性遺伝として捉えていたGiant形質は優勢遺伝であったとの認識を深めています。このことは有力な米国を中心としたレオパードゲッコーの専門家達によっても同時に検証されています。
この優性遺伝は不完全優性遺伝(Incomplete Dominance)のコンディションにありホモのGiant(Super Giant)とノーマルの組み合わせから得られるベビーは全てヘテロのGiant(Giant)となり中間サイズの表現型となります。(この場合の中間サイズとは氏の経験から♂で80〜110g、♀で60〜90gです。)さらにホモの表現型がスーパージャイアントでありそのサイズは♂で110g超、♀で90g超を目安として定義しています。(実際にはその個体の繁殖結果によってしか区別出来ない可能性もあります。この場合は完全優性遺伝のコンディションとなりその大きさは他の遺伝子との組み合わせによってランダムに発現するということになります。しかしながら氏の検証結果を見ると110g超の♂は全てホモである事が確認できたということです。)
大きさという曖昧な形質に対する変異について単純に劣勢だ、優勢だと考えることがナンセンスの感もありますが、この事がマーケットに与える影響について考えてみましょう。
Giantが劣性遺伝の場合
Giant x Giant = 全ての子供はGiant
Giant x Normal = 全ての子供はヘテロGiant
ヘテロ x ヘテロ = 25%がGiant、75%がポッシブルヘテロ
今現在、ヘテロGiantはマーケットに導入されていませんでしたので大きな混乱は無いと思われますが、ハイポタンジェリン系との交配が進み同一クラッチにGiantとヘテロ又はノーマルが混在した場合にGiantとそうでない個体との識別が問題になります。
Giantが優性遺伝の場合
Super Giant x Super Giant = 全ての子供はSuper Giant
Super Giant x Giant = 50%がSuper Giant、50%はGiant
Super Giant x Normal = 全ての子供はGiant
Giant x Giant = 25%がSuper Giant、50%がGiant、25%はNormal
Giant x Normal = 50%がGiant、50%がNormal
Giantとそうでない個体に加えSuper Giantとの識別が問題になります。GiantとSuper Giantは目視では識別できません。Ron Tremper 氏によると成長後の大きさで判断できるということですが確実であるとはいえないでしょう。経験のあるブリーダーが生まれた子供を基に判断をする必要があり、現在マーケットにでているGiant(ホモ又はヘテロ)同士の組み合わせからもNormalが生まれてくることが混乱を招きそうです。